2020年オープンキャンパス(青木・伊藤(康)研究室)

リモートセンシング

目次

リモートセンシングとは,航空機や人工衛星などを使って遠隔から地表面を観測する技術です.遠くから地表を精密に把握するためには,レーダが使われています.ここでは,本研究室が取り組んでいる合成開口レーダを用いた地表解析に関する研究について説明します.

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図 1:カメラで撮影された画像(左)と合成開口レーダで撮影された画像(右)

Pi-SAR2 は,情報通信研究機構 (NICT) が開発した航空機搭載型合成開口レーダです.図2のように航空機の羽の下に搭載されます.東日本大震災,御嶽山の噴火,熊本地震など大規模な災害が起こったときに状況確認や減災などのためにPi-SAR2が使われています.本研究室では,NICTとの共同研究において,Pi-SAR2で撮影されたSAR画像の解析を行っています.

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図 2:NISTが開発した航空機搭載型合成開口レーダ Pi-SAR2

複数の航路で撮影されたSAR画像があれば,ステレオビジョンを使って地表面の3次元形状を計測することができます.ただし,ステレオビジョンは,カメラで撮影された画像を基本としているため,レーダで撮影された画像にそのまま適用することができません.カメラと同様に3次元空間を2次元空間に投影するモデルが必要となります.図3がSAR画像の投影モデルを簡単に説明したものです.航空機のアンテナから対象 $P$ にレーダが照射されます.対象 $P$ で反射されたレーダを航空機のアンテナで受信します.そのときの送受信の時間に応じてSAR画像が生成されます.画像の投影位置は,図3に示すように,アンテナを中心とする円と$XY$平面の交点となります.見てわかるように,投影位置が少し前にずれます.これは,フォアショートニングというレーダ画像特有の現象です.フォアショートニングを考慮した投影モデルを考えてステレオビジョンで3次元形状を計測する必要があります.手法の詳細は,文献 [1] を参照して下さい.図4は,東北大学工学部の青葉山キャンパス周辺のSAR画像から3次元計測をした結果です.わかりにくいかもしれませんが,正しく計測できています.

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図 3:SAR画像の投影モデル
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図 4:青葉山キャンパス周辺の3次元計測の結果(左:SAR画像,右:計測結果)

本研究室で取り組んでいるレーダ画像を使ったリモートセンシングについて紹介しました.本研究では,これまでのリモートセンシング技術に対してコンピュータビジョンの技術を融合するという新しい試みを行っています.現在,NICTが新しい航空機SARシステムを開発しています.分解能などが向上する予定なので,今までにない高精度な解析を行うことができると期待されています.

  1. D. Maruki et al., "Stereo radargrammetry using airborne SAR images without GCP," Proc. IEEE Int'l Conf. Image Processing, no. COI-P2.5, pp. 1-5, September 2015. [PDF]
  2. H. Imai et al., “A method for observing seismic ground deformation from airborne SAR images," Proc. IEEE Int'l Geoscience and Remote Sensing Symp., pp. 1506-1509, July 2019. [PDF]